結構な活字好きだったはずの私が、本を読まなくなったのは確実に老眼のせいである。
自分はきっといつまでも少女漫画を読み続けていくのだろうと思っていたし、実際40代前半までは月刊誌も隔週刊誌も買っていてドラマになる前に物語把握は当たり前だった。
テレビの中では人が死ぬのが大嫌いでも何故かミステリー文庫が大好きでお気に入りの小説家の方を見つけると全巻制覇が楽しかった。
なのに老眼鏡デビューをためらっていたせいで本を読まない習慣(?)がついてしまっていた。
常連のお客様でいつも小脇に単行本を抱えて見えられる女性がいらっしゃる。
いつもきちんとしていらして、センスもいい彼女が何を読んでいるのかとても気になっていて、ついに声をかけてみた。
その時は恥ずかし気に本を閉じられて、「これは、子供が読むみたいなやつなの。」と教えてはいただけなかった。
おススメあったら教えてください、とお声がけしてその日は終わったのだけど、次に見えられたときに「これはおススメよ」と一冊持ってきてくださった。
自分では絶対選ばないであろうその物語はとても新鮮で、老眼鏡で一気に読み終えてしまった。
その後も毎回、お持ちいただいて自分で選ばない物語たちはは思いもよらない品ぞろえでとても楽しませていただいている。
しかし初めて本を貸していただいてから1年になるけれどいまだに「子供が読むみたいなやつ」は回ってこない。
いつの日かそんな一冊を貸していただける日を楽しみにしている。
「今年最後にホットサンドを食べようと思ってきたんだけど、メニューみたらやっぱりお粥も食べたくなったから年内にまた来るわ」と彼女は言った。
きっとまた新しい物語を持ってきてくれるはず。